認知症の予防は、多くの人にとって大切な関心事です。このたび、無意識に行われる特定の脳の運動が、記憶ゲームよりも認知症のリスクを大きく減らす可能性を示す、画期的な20年間の研究結果が発表されました。これは将来の認知症予防に新たな光を当てるものです。

📍 10秒でわかるニュースの要点

  • 「スピード・トレーニング」と呼ばれる脳の訓練が認知症予防に効果的と判明しました。
  • 20年間の追跡調査で、認知症の発症リスクが25%減少したと報告されています。
  • この訓練は、無意識のうちに脳の働きを改善する「暗黙的学習」に関わると考えられています。

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ニュースの内容をわかりやすく解説

今回注目されたのは、「ACTIVE」という大規模な研究の20年間の追跡調査の結果です。この研究には、65歳以上の約3,000人近い高齢者が参加しました。参加者は、記憶力、推論能力、そして「処理速度(しょりそくど)」と呼ばれる三つの異なる種類の脳の訓練グループに分けられました。

このうち「スピード・トレーニング」は、画面に表示される情報を素早く見分けて判断する訓練です。たとえば、車の運転中に周りの状況を瞬時に把握するような、素早い意思決定が求められます。この訓練は、最初に数回のセッションを行い、その後さらに「ブースター・セッション」と呼ばれる追加の訓練も受けたグループがありました。

研究の結果、このスピード・トレーニングをブースター・セッションとともに受けたグループでは、そうでないグループに比べて、20年間で認知症を発症するリスクが25%も低いことが分かりました。特に重要なのは、記憶力や推論能力を鍛える他の訓練では、このような認知症予防の効果は見られなかった点です。

なぜスピード・トレーニングだけが効果的なのでしょうか。研究者たちは、これが「暗黙的学習(あんもくてきがくしゅう)」に関わるためだと考えています。暗黙的学習とは、意識せずとも体が自然と覚えていく、自転車の乗り方のようなスキルを指します。これに対し、歴史の年号を覚えるような学習は「明示的学習(めいじてきがくしゅう)」と呼ばれます。スピード・トレーニングは、脳の回路に長く残る、無意識の習慣やスキルを築くことで、認知機能に良い影響を与えている可能性があります。

ニュースの背景と影響

これまでの脳トレ研究では、認知症予防への明確な効果はまだ十分に示されていませんでした。しかし、今回の20年という長期にわたる大規模な追跡調査は、その有効性を示す強力な証拠となり得ます。この研究結果は、認知症予防のアプローチに新たな可能性を示唆するものです。

ただし、注意点もあります。今回の研究で効果が確認されたのは、特定の「スピード・トレーニング」という訓練方法に限られます。また、認知症の診断は医療記録に基づいて行われており、病気の根本的な原因に影響を与えたのか、あるいは特定の種類の認知症に効果があったのかは、今後のさらなる研究が必要です。それでも、非薬物療法(薬を使わない治療法)で長期的な予防効果が示されたことは、非常に大きな進歩だと言えます。

私たちにできる備え

この研究は、私たちの脳が年齢を重ねても変化し、新しいことを学べる「脳の可塑性(かそせい)」を示しています。特定の脳トレが効果を示したとしても、それだけに頼るのではなく、日々の生活の中で脳を活性化させることが大切です。

例えば、新しい趣味を始めたり、不慣れな場所へ出かけたり、いつもと違う道を通るなど、普段と異なる体験をしてみましょう。これらは、素早い判断や注意力の切り替えを必要とする「無意識の脳の運動」につながる可能性があります。

また、認知症予防には、バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠、社会とのつながりも非常に重要です。今回の研究結果を参考に、様々な形で脳を刺激し、心身ともに健康な生活を送ることを心がけましょう。積極的に活動を続けることが、私たちの脳の健康を守る第一歩となります。